| No.242 2009.1.15 |
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消防団始式で挨拶。荒川決壊による水害への対策を期待 墨田区の本所消防団、向島消防団、荒川区の尾久消防団で「始式」があり、国政の立場から挨拶をした。今後、荒川消防団の始式がある。関東大震災の被害が大きかった下町だけに、消防団への区民の尊敬の気持ちは強く、始式にも多くの町会の幹部が出席していた。私も昨年 12月末には、各分団の詰め所を拠点に域内の警戒に当たっていらっしゃる方々を極力お訪ねし、激励した。 挨拶では3つのことを話した。1つは荒川の堤防が「200年に1度の大雨」で決壊した際の対応、もう1つは国土交通副大臣として岩手・宮城内陸地震の発生当日に現地入りした経験からの感想、3つめは全国の消防団の動向など総務省消防庁から聞いた話だ。 東京消防庁の消防総監や区長などの式辞では、震災や火事についての言及は多岐にわたったが、水害については昨年夏のゲリラ豪雨により豊島区の下水道内で作業をしていた5人が亡くなった事故くらいしか触れられなかった。だが、消防団の任務は自然災害すべてが対象である。また、演歌調の向島消防団歌は「水火も辞せぬ ド根性」で始まるし、本所消防団歌の1番にも「首都東京のその東 墨田の誇る消防団 水火の害を防ぐため」とある。 荒川堤防決壊の被害については、昨年9月初めに発表された中央防災会議の報告を基に話した。新聞各紙で「死者2100人も」「死者最悪3500人」などのショックな見出しで取り上げられた報告書だ。どの箇所で決壊するか、排水ポンプや水門がちゃんと稼動するかどうか、住民がどの程度、避難するか、などによって数字は変わるが、ゼロメートル地帯である墨田区や、荒川右岸の低地である荒川区(荒川より内側の隅田川に沿っている。名前が同じなので誤解されることが多いが、荒川には面していない)の被害はきわめて大きい。 中央防災会議の報告は、関東全域で1900人を超す死者・行方不明者を出した1947年(昭和22年)9月のカスリーン台風と同じ程度の台風が来襲し、埼玉県、東京都の荒川流域に3日間で計550ミリの雨が降ることを想定。「200年に1度」というと大変な気がするが、確率論としては、今後30年以内に 14%の確率で発生する。(カスリーン台風は被害の中心が利根川流域で、荒川流域ではさほどの被害はなかった) 洪水による死者数が最大になるケースは、墨田区墨田地先の荒川右岸の堤防が決壊した場合。まさに我が町だ。電気系統が水に浸かるなどして排水施設が稼動しないケース(この可能性が高い)では、避難率0%の場合、死者は江東区、江戸川区を含む江東デルタ地帯全体で3500人、うち墨田区は600人。避難率が 40%の場合は全体で2100人のうち墨田区が400人、80%が避難した場合には死者数は全体で400人、墨田区は100人。 避難率はこれまでの水害では一般的に40%程度であり、インターネットによる調査でもそれくらいだ。しかし、避難率を80%に高めることで墨田区内の死者を400人から100人にまで減らすことができる。「これを、地元のことを一番よくわかっている消防団の皆さんにぜひ、お願いしたいのです」と述べた。墨田区は全体が低地で、逃げるべき高台はない。上野の森まで行かなければならない。しかし、中央防災会議を主催している内閣府の防災担当者(もともと国交省河川局の技官)によると、区内の高いビルの上層階にのぼれば助かる。ただ、停電している場合が多いので、階段でのぼらなければならない。 もうひとつ、この防災担当者から聞いた話をした。「地震と違って、荒川の堤防決壊は突然起きるわけではない。堤防が決壊するとすれば、上流の埼玉県に激しい雨が降って増水し、数日たった後ですから、逃げる時間は十分あります。国交省関東地方整備局などの助言に基づいて区長が避難勧告を出すことになっていますが、そのときはすでに台風が去って、墨田区の上空は青空ということが大いにありえるのです。また、すべての区民がテレビや区の広報車に注意を払っていると限りません。そんなとき、住民に、本気になって逃げてもらう、また、お年寄りなど1人では避難できない人には付き添いが必要となる。それは地域の実情をいちばんよく知っている消防団の皆さんに頑張っていただくしかないのです。」 荒川区の消防団に対しては、「北区志茂地先で堤防が決壊した場合」の推定を紹介した。ここは荒川と隅田川の分岐点で荒川下流河川事務所がある地点。ここが決壊する時点ではすでに隅田川、神田川、日本橋がすでに満杯となっていると考えられる。 排水施設がまったく稼動しない場合、避難率0%なら荒川右岸の低地全体(足立区、北区、台東区、板橋区などを含む)で死者2000人、うち荒川区は500 人、避難率40%なら全体の死者1200人のうち荒川区は300人、避難率が80%に向上すれば死者は全体で400人、荒川区は100人に減る、と報告書では推定している。 ただ、荒川区の場合、逃げる先が飛鳥山(北区)、鶯谷、上野など近くにある。早めに動けば、高齢者でも十分逃げられる。 報告書の堤防決壊箇所はあくまで幾つか選んだ想定箇所に過ぎない。入間川が合流する埼玉県川越市より下流で増水が起きれば、激流の逃げ道はなく、荒川区も墨田区もそれなりの被害を受けるのは必至だ。 消防団始式の挨拶では時間の都合で紹介しきれなかったが、中央防災会議の報告書によれば、水の中を歩いて逃げられるのは水深60センチ程度まで。また、死者数の推定手法は、米国陸軍工兵隊が開発したモデルに準拠し、浸水の深さがどの程度になるか、屋根の上などにどの程度避難できるか、各地区の65歳以上の人口がどれくらいか、などを勘案して計算している。米国のハリケーン常襲地域であるルイジアナ州、テキサス州などではふだんから大規模な避難訓練も行っており、昨年9月に日本でも繰り返し報道されたが、郡長などがテレビで「居残った場合には救助しない」とまで言い切って避難を呼びかけ、州外に避難するためのバスを出し、90数パーセントの住民が脱出して街はゴーストタウンのようになる。時間を追っての経緯が中央防災会議の報告書にも盛り込まれている。(報告書発表の数日前の米国の事例をインターネットで入手して写真入りで紹介しており、いわゆる「お役所仕事」とは異なる、優れた報告書だと私は思う) 岩手・宮城内陸地震については、何人かの来賓が昨年を振り返る災害として触れたため、私は「6月14日、土曜日の午前8時43分に発生、国土交通副大臣だった私は11時半に市ヶ谷の防衛省の屋上から自衛隊のヘリで現地入りした。泉防災担当大臣とともに、政府の調査団 31人のうちの1人だった」と述べ、まず、岩手県一関市で、「一関」と書かれたハッピを着ている消防団員を見かけたことを話した。道路が寸断され、いつ土砂崩れが起きるかわからない道を、孤立している住民を捜しに消防団員たちが分け入っていく姿に、「私のところの下町だけでなく、全国各地の消防団がこうして頑張っているのだな、と感動しました」と。 さらに、テレビで何度も放映された通り、橋や道路がストンと垂れ下がっている様子が、川がせき止められてできた土砂ダムなど、地形が変わるほどの災害を上空からヘリで見たが、「山の中の地震だったため、助けられる人が少数で、助けるほうは東京消防庁をはじめ東北、関東一円の消防や警察、自衛隊、海上保安庁が応援体制に入り、被災者、孤立者をヘリでつり上げた。だから、発生当日の夜には2万本に及ぶペットボトルの水や、おにぎり、タオル、アイマスクが避難住民のために届けられ、2日後には自衛隊の車で入浴サービスも行われました。しかし、現場から市ヶ谷に戻る途中、荒川区や墨田区の上空を飛び、ビルや住宅が密集した、この地域で同じ規模の地震が起きたら、どうなるのか。助けを必要とする人が、助ける立場の人よりずっと多い、とぞっとしました」と報告し、「数日間は、皆さん消防団の方々に力を発揮してもらわなければならない」と期待を寄せた。 全国の消防団員の数は平成10年には96万人余だったが、平成20年には約88万9000人にまで減った。そのなかで女性団員は8400人から1万7000人に倍増している。総務省消防庁では「全国の消防団員100万人、うち女性団員10万人」との目標を掲げている。 都道府県別の消防団員の数は、東京都は2万4000人なのに対し、福島、新潟、長野、熊本などが3万人台で東京を上回っている。しかし、全国的には人員が減っているのに対し、東京の特徴は確実に人員が増えていること。その原動力は女性と、在住者だけでなく在勤者への呼びかけを行い、増やしていること。東京消防庁の団員募集パンフレットに男性1人、女性1人が顔写真入りで紹介されており、男性のほうは向島消防団員。サービス業勤務で「会社の社長さんに勧められ消防団に興味を持ち入団しました」という言葉が載っている。女性のほうは芝消防団で観光汽船会社勤務。 総務省消防庁は昨秋、電力、自動車など主要60社を回って「ぜひ、社員の方を勤務地で消防団員に。そして訓練や出動の際には有給休暇にしてほしい」など呼びかけたという。電力やガスなど公益企業で支店が点在している会社は別として、一般の大企業で効果があるかは疑問だが、私は担当課長に「ぜひ、鳩山大臣に記者会見で話してもらって、世の中の注目を集めるように」と助言している。 |
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